フリーランス雑記帖

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【名作漫画】『まんが道』に見るフリーランスのリアルな実態【藤子不二雄A】

昔から繰り返し読んでいるバイブル的な漫画作品があるという人も多いと思いますが、僕の場合は藤子不二雄A先生の『まんが道』がそれに当たります。

つい最近も全巻を一気に読んだばかりで、読んだ後は不思議と創作意欲が湧いてくるので、人生の節目や仕事が一段落した時に折に触れて読んでいる作品です。

実は『まんが道』に描かれている内容はフリーランスの生活そのもので、フリーランスで仕事をしている人であれば共感できる場面がたくさん登場します。

今回は、いかに『まんが道』がフリーランスのリアルな実態を表しているかを紹介します。

まんが道』とは

藤子不二雄Aが描く、藤子不二雄の自伝的な青春長編漫画です。掲載誌が変わりながら連載は43年間にわたって続き、2013年に完結しました。1986年にはNHKでドラマ化されています。

満賀道雄才野茂の出会いから始まり、少年時代~トキワ荘時代が描かれ、内容や登場人物などはほぼノンフィクションですが、若干アレンジが加えられています。

映像で見る『トキワ荘

トキワ荘はすでに取り壊されてしまいましたが、1981年にNHKで放送された『NHK特集「わが青春のトキワ荘 ~現代マンガ家立志伝~」』では、当時のトキワ荘を見ることができます。
この番組では、1980年(昭和55年)に「トキワ荘」が取り壊されるのをきっかけに集まった、かつてトキワ荘で暮らしていた手塚治虫をはじめ、藤子不二雄赤塚不二夫石ノ森章太郎などの売れっ子漫画家による同窓会の様子が紹介されています。
それとは対照的に、番組ではかつてトキワ荘で暮らしていた漫画家の森安なおやにもスポットが当てられています。
森安なおやは『まんが道』にも登場し、主に『漫画少年』に作品を発表していました。寡作ではあったものの、叙情に溢れた素朴でかわいい絵柄が特徴で、当時は周囲からの評価も高かったようです。
この番組は『まんが道』のその後ともいえる内容で、当時のトキワ荘を知ることが出来る貴重な資料ともいえます。

 

仕事を受けまくる

まんが道』といえば、富山から上京して1年ほどで売れっ子漫画家となり、多数の仕事を抱えた状態でお盆に実家に帰省して、ほとんどの仕事を落としてしまう悪夢のようなエピソードが印象的です。
これはフリーランスによくある、自分のキャパシティを把握していない状態で仕事を受けまくり、結果的に納期に間に合わなかったパターンです。
このエピソードはフリーランスにとっては他人事ではなく、現実として受け止めてしまうリアルさがあり、『まんが道』を読む度にこのエピソードは胸に刺さります。

仕事中の散歩

まんが道』では、仕事のアイデアを練るために散歩をする光景が頻繁に見られます。

たしかに漫画家のようなクリエイティブな仕事の場合、机に向かっているだけではいいアイデアは浮かばないので、気分を変えるため散歩に行くのは理にかなっていますが、この気軽さはフリーランスならではだと思います。

まんが道』における散歩の光景は一見すると気軽に見えますが、完成までの過程は関係なく結果さえ出せばいいというフリーランス実力主義の実態がリアルに表現されていると思います。

お金の描写

まんが道』では、しばしばお金の話題が登場します。

藤子不二雄は故郷の富山県高岡市で漫画を描いていた頃から、雑誌の漫画賞に応募して賞金稼ぎをしており、2人の名義で預金通帳を作り貯金額が増えていく様子は、漫画で稼いでいるというリアルさが伝わってきました。

また、上京して漫画家になってからは、各雑誌から現金書留が郵送されたり、源泉徴収されたギャラを直接受け取る描写がとてもリアルで、当時の漫画家の生活実態が垣間見れます。

食事の風景

まんが道』では食事の場面が頻繁に登場します。

ラーメン屋「松葉」のラーメン、カレー、自炊、チューダーパーティー、和食、洋食、お菓子などバラエティ豊かで、『まんが道』と食事は切っても切り離せません。

食事シーンの多さは、漫画制作は体力勝負であり、食事が重要な気分転換のひとつだったことがうかがえます。

まとめ

まんが道』は藤子不二雄の自伝としてだけでなく、フリーランスの人なら共感する場面がたくさん登場し、当時の漫画家のリアルな実態がわかります。

まんが道』では、満賀と才野が漫画家という夢に向かって一心不乱に突き進みますが、その姿に自分を重ねることで当時の漫画家の生活が追体験できる素晴らしい作品です。